01 使い方を共有する手順
AIの使い方を、 社内で配れる形にする。 この方法で、こうなります うまく使っている人のやり方が、そのまま全員のやり方になる 当てはまるかどうかと、事務・管理部門 に置き換えた例は、このあとに続きます。
AIを配ると、必ず使いこなす人が出てきます。 その一人は速くなる。けれど会社として見れば、良くなったのは一人分だけです。 隣に渡らないのは、うまくいった頼み方が本人の中にしかない からです。書き残すのは手間ですし、置く場所も決まっていない。いまは、その手間がなくなりました。 うまくいったやり取りをAIに見せれば、他の人がそのまま使える1行にして返してきます。 人はそれを共有シートに貼るだけ。探すのもAIです。 受け取った人は、読んで覚えるのではありません。コピーしてAIに渡せば、その場で同じ仕事が終わります。
ここに書かれているのは、ひとつの例です。 置き場所も、担当の決め方も、会社によって変わります。
① なぜ、ノウハウは共有されないのか
共有されない理由 何が起きているか 書き残すことが、誰の仕事にもなっていない 「やり方を残す」が誰の担当でもない。忙しければ、まず後回しになる 置き場所が決まっていない 共有しようにも、どこに置けばいいか分からない。結局、個人のPCとチャットの履歴に残ったままになる 置いても、見に行かない 自分の仕事で使う場面が思い描けないと、一覧を作っても開かれない。箱だけが残る 誰がうまく使っているか分からない 各自が別々に試しているので、社内で比べる機会がない。良いやり方が埋もれる 書く形が決まっていない 何をどこまで書けば人に渡せるのか分からない。中途半端に書いて、結局使われない
どれも、個人の努力では解けません。 会社として決めることを決めれば、あとはAI側で回ります。
② この先に出てくる言葉は、2つだけです
ここから少し専門的な言葉が出ます。覚えなくて構いません。読み進めるうちに、何のことか分かります。
プロンプト PROMPT AIへの頼み方 のことです。同じ作業でも、頼み方が違えば返ってくるものが変わります。うまくいった頼み方が、そのまま人に渡せる財産になります。 スキル SKILL 「この作業はこうやる」をひとまとめにした文章 のことです。頼み方(プロンプト)だけでなく、先に用意するもの・出てくるものの形・気をつけること まで入っています。 これがあると、渡された人は考えずに同じ作業ができます。ChatGPT や Claude には、これをそのまま登録しておける機能もあります (呼び名も同じ「スキル」です)。使うAIは、法人向けの契約のものに限ります。 具体的には ChatGPT Business か Claude Team (Claude for Work)。無料版でも、この記事のやり方は動きます。 打って、コピーして、貼るだけだからです。それでも法人契約にするのは、入れた情報の扱いが違う からです。どちらも「業務データや会話を学習に使わない」ことを既定としており 、管理者がアカウントをまとめて管理できます。会社の仕事を入れる以上、ここは個人のアカウントで済ませないでください。
③ 実際、どう使うのか
先に全体像です。置き場所は、共有スプレッドシート1枚。1行に1件ためていきます。 肝は2つ。その1行を人に書かせないこと と、あとから書き換えさせないこと です。行を作るのはAI、人は貼るだけ。直したいときも、上書きせずに1行足します。
用意するもの 1つめ、法人向けの契約をしたAI。 ChatGPT Business か Claude Team です(②の最後に理由を書きました)。全員が同じものを使う必要はありませんが、会社として契約したものを使います。 2つめ、共有スプレッドシートを1枚。 列は5つだけです。1行目にこの見出しを入れるだけ いつ | だれ | どんなときに使うか | AIに渡す文章 | 気をつけること3つめ、うまくいったときのチャットのやり取り。 書き直す必要はありません。そのまま使います。① AIに書かせる 読んで覚えるための手順書ではありません。 受け取った人がAIに渡せば、そのまま動くものを作ります。 作業をしたその画面で、この一言を打ちます。 そのまま打てます いまのやり取りを、他の人が同じ作業をできる形にしてください。 そのうえで、次の5つをタブ区切りにして、1行だけ出してください。 いつ|だれ|どんなときに使うか|AIに渡す文章|気をつけること ・「いつ」は今日の日付。分からなければ空欄で結構です ・「だれ」には〔自分の名前〕と書いてください ・「AIに渡す文章」は、コピーすればそのまま使える頼み方にしてください ・どの項目にも改行を入れないでください。箇条書きは「・」でつないで1行に収めます ・前置きや説明は付けず、1行だけ返してください ・社内で共有するので、個人名と案件名は外してください1行だけ返ってきます。 後半の細かい指定には、それぞれ理由があります。 改行が混じったまま貼ると1件が何行にも割れて表が壊れます し、「はい、まとめました」のような前置きが付くと列がずれます 。この一言はコピーして使い回せます。 〔自分の名前〕のところだけ、一度書き換えてください。② 貼る 返ってきた1行をコピーして、スプレッドシートの一番下に貼ります。 タブ区切りなので、貼った瞬間に5つの列へ分かれます。 人が入力するところはありません。 AIがシートに直接書き込むことはできません。 (できる仕組みもありますが、使っているツールや契約によって変わります。)人がやるのは、コピーして貼るところだけです。 各自がシートを開いて、自分の言葉で書き込む——これはやらないでください。 書く手間が入った時点で、誰も出さなくなります。 ③ 探して、使う 行が増えると、目で探すのが面倒になります。 シートの検索(Ctrl+F)も、言葉が少し違うだけで当たりません。探すのもAIにやらせます。 シートを開いて、見出し行から下まで全部を選んでコピー し、AIに貼って、こう続けます。そのまま打てます これは社内でためている「AIへの頼み方」の一覧です。 これから「○○(今からやること)」をします。 ・使えそうな行があれば、「AIに渡す文章」の列をそのまま出してください ・近いものが複数あれば、違いを一言ずつ添えて並べてください ・同じ用途の行が複数あるときは、日付が新しいものを優先してください ・そのままコピーして使える形で出してください。前置きは要りません ・使えるものが無ければ「無し」とだけ答えてください出てきた文章を、そのまま使います。 少し違うときは、続けて「今回は○○の場合に合わせて」と足すだけです。見つかったら、そのまま同じチャットで続けられます。 出てきた文章のとおりに資料を貼れば、そこで作業が終わります。別の画面を開き直す必要はありません。「無し」と言われたら、自分のやり方で進めて、終わったら①で1行足します。 どちらに転んでも無駄になりません。この一言も、コピーして使い回せます。 「○○」のところだけ毎回変えます。④ 増やす(書き換えない) すでにある行は、書き換えません。 誰かが今日も使っている行かもしれませんし、書き換えると何がどう変わったのか、誰にも分からなくなります。 うまくいかなかったところがあったら、その作業をした会話の続きで 直させて、新しい1行として足します。そのまま打てます いまのやり取りで、うまくいかなかったところを直してください。 そのうえで、さっきと同じ5つの項目を、同じ決まり(タブ区切り・改行なし・前置きなし)で 1行だけ出し直してください。 出てきた1行を、一番下に足すだけ です。古い行はそのまま残します。古い行が選ばれてしまう心配は要りません。 ③の一言に「日付が新しいものを優先して」と入っているので、探すたびに、新しいほうが選ばれます。 だから見直しの日も、消す作業も要りません。 ただ足していくだけです。並べ替えもしません。 足す場所はいつも一番下——ここが動くと、次の人が迷います。整理したくなったら⑤へ。⑤ ときどき、担当が並べ直す 探しやすくするためではありません。 探すのは③でAIがやります。これは「何が揃っていて、何が無いか」を見るため です。 行が増えてきたと感じたら——日を決める必要はありません ——担当がシートを丸ごとコピーして、AIに貼って、こう頼みます。担当だけが、ときどき使います これは社内でためている「AIへの頼み方」の一覧です。 用途ごとに分類して、一覧にし直してください。 ・分類ごとに、何本たまっているかを書いてください ・中身がほぼ同じ行があれば、まとめて指摘してください(消さなくて結構です) ・この部門の仕事なら当然ありそうなのに、1本も無い用途があれば挙げてください出てきたものは、別のタブに貼ります。元のシートは並べ替えません。 並べ替えてしまうと、次の人が「一番下に足す」場所を見失います。 見るところは最後のひとつ、「無い用途」 です。そこが、次に誰かに出してもらうところになります。 重なっている行は、無理に消さなくて構いません。新しいほうが選ばれます。もう一歩進めるなら ここから先は、行がたまってからで構いません。 先にやる必要はありません。丸ごとコピーして貼れるのは、だいたい100行くらいまでです。 (1行あたり600字ほどになるので、100行で6万字ほど。)それを超えて重くなってきたら、ChatGPT にも Claude にもある「プロジェクト」 ——資料を入れておける場所——にシートを書き出して入れておきます。毎回貼らなくても、聞けば出てくる ようになります。 毎日のように使うものは、「この作業をスキルにして 」と頼んで登録しておく手もあります。どちらも、無ければ③までで十分に回ります。 全員に配るのは、3つの一言だけです。 「1行にして」「探して」「直して1行にして」——どれもチャットに打つだけで、設定も連携も要りません。 4つめ(並べ直して)は、担当だけが、ときどき使います。 覚えてもらう必要はありません。コピーして使うものです。チャットで終わらないのは、シートへの出し入れだけ ——出てきた1行を貼る、探すときにシートをコピーする。この2つだけが手作業です。 人が決めるのは、担当と、シートを置く場所と、「入れない情報」——この3つだけです。
④ どう進めるか
初日|使うAIと、担当と、シートを決める 使うAIは、法人向けの契約のもの (ChatGPT Business か Claude Team)。契約がまだなら、ここが最初の1歩です。 担当は部門にひとり、その仕事を一番よく知っている人。共有スプレッドシートを1枚つくり、1行目に5つの見出しを入れるだけ です。 あわせて「AIに入れない情報 」を1枚。たとえばお客さまの名前・個人情報・見積の金額・未公開の計画 など、社外に出たら困るものを書き出すだけ です。ここまでは1日で終わります。 初日|見本を1行入れる 担当が自分の仕事で、さきほどの一言を打って1行出し、貼ります。先に見本が1行あると、他の人も真似できます。 1週目|一言を全員に配る 3つの一言 (1行にする/探す/直して足す)とシートのURLを配ります。伝えるのは「うまくいったら、これを打って、出てきた1行を貼ってください 」だけ。覚えてもらう必要はありません。 コピーして使うものです。2〜4週目|週に一度、増えた分を流す 担当がチャットに流します。出した人の名前が列に入っています。 誰が使いこなしているかが見えると、次が出てきます。 1か月目|「始める前に見る」をルールにする 行がそろってから宣言します。伝えるのは「作業の前に、シートをコピーしてAIに貼り、使えるものがあるか聞いてください」 だけ。先にルールだけ作ると、聞いても何も出てこないので続きません。 使うたび|おかしかったら、直した1行を足す 見直しの日は作りません。書き換えもしません。 使い終わった会話の続きで「直して、同じ1行で出し直して」と打ち、一番下に足すだけ です。古い行はそのまま残します。 探すときに「日付が新しいものを優先して」と言っているので、放っておいても、新しいほうが選ばれます。 増えてきたと感じたら|担当が並べ直す 日を決める必要はありません。 担当がシートを丸ごとコピーしてAIに貼り、「用途ごとに分類して、重なっているものと、1本も無い用途を出して」と頼むだけ。出てきたものは別のタブに置きます。元のシートは並べ替えません。 見るのは「1本も無い用途」 。次に誰に出してもらうかが、そこで決まります。 ⑤ こうすると、続きません
個人のアカウントや無料版のまま始める — やり方としては動きますが、会社の情報を入れる以上、法人向けの契約にしてください。 学習に使われない設定が既定になり、管理者がアカウントを管理できます各自にシートを開いて書かせる — 書く手間が入った時点で、出てこなくなります。行を作るのはAIです。 人は貼るだけにしてください行を書き換えられるようにする — 誰かが使っている行が突然変わります。足すだけ にしてください。古い行は残したままで困りません目で探させる — 行が増えた時点で、見なくなります。シートごとAIに渡して聞く 形にしてください列を増やしすぎる — 埋めるのが面倒になって止まります。5列で足ります 入れていい情報を決めずに始める — 途中で「これは入れていいのか」が出て、そこで止まります⑥ できあがるもの/変わること
共有スプレッドシート1枚 (1行1件。足すだけで、消しも書き換えも並べ替えもしません)そのシートから探すための一言 (貼って聞けば、使える行が出てきます)用途別に並べ直した一覧 (別タブ。担当がときどき出し直します)まだ1本も無い用途の見当 — 次に誰から出してもらうかが、ここで決まります 「始める前に、シートに聞く」という社内ルール AIに入れない情報を書いた1枚 そして——誰かが見つけたうまいやり方を、次の人がその日のうちに使える 。教える時間も、覚える時間も要りません ⑦ こんな会社に向いています
「あの人はAIをうまく使っているらしい」が、話で終わっている よく使う人と、まったく使っていない人に分かれている 新しく入った人が、また一から自分のやり方を探している うまく使っていた人が異動して、元に戻った たとえば、事務・管理部門の場合 ——総務・経理・営業事務。ここはどの会社にもあって、しかも一人か二人で回している ことが多い場所です。だから工夫も、個人の中に溜まります。
⑧ たとえば、事務・管理部門の場合(サンプル)
最初の1か月でたまるのは、たとえばこんなものです。 ・議事録の要約 — 形が決まっているので、いちばん先に楽になります ・社内通知の文面 — 過去の通知を渡すと、会社の言い方で返ってきます ・問い合わせへの返信の下書き — よくある質問から順に ・報告書の下書き — 前月分を渡すと、続きの形で書けます ・請求書と発注書の突き合わせ — 数字が合わない行だけ出させます どれも、いま毎月やっている作業です。仕事はそのままで、やり方だけが共有されます。
KEY POINT
やることは1つです。うまくいった頼み方を、1枚のシートに1行ずつためる。 その1行を書くのはAIです。 人は貼るだけ。探すのもAIです。 シートごと渡して「これからこれをやる」と言えば、使える行が出てきます。書き換えはしません。足すだけです。 誰かが使っている行を壊さずに済み、新しいほうが自然に選ばれます。 たまるのは、読ませるための資料ではありません。コピーすればそのまま動く文章です。 一人が見つけたうまいやり方で、次の人がその日から仕事を終えられる。 これが、そろえるということです。
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