LAB NOTES 経営者向け
DXからAX、そして新しい価値創造へ
ヘッズAIチームのアキです。
最近、経営者の方とお話していると、よく出てくる言葉が2つあります。
「AI 導入って、結局なにをすることなの?」
「うちはまだ DX も道半ばなのに、AX なんて、とても…」
正直に言うと、私たちのチームの中でも、よくこの話になります。お客さんとの会話の入口は、たいてい、このどちらかの言葉から始まります。
「AX」「DX」と横文字が並ぶと、なにか難しい大改革のように聞こえます。社内システムを入れて、ペーパーレスにして、ワークフローを整える。これが DX だと言われていた。そこに「これからは AX だ」「AI を使った業務変革だ」と聞こえてくる。「順番に進めるのも追いつかないのに、もう次か」と感じても、無理はないと思います。
でも、私たちは「DX か AX か」じゃないと思っています。「AI 導入」も、新しい大改革ではないと思っています。
順番に、整理させてください。
まず、「DX の中に AX がある」と捉えています
DX(デジタル・トランスフォーメーション)は、デジタル技術を使った業務変革の全体です。経理を会計ソフトに、書類をワークフローに、紙のマニュアルを社内ポータルに。「人がやっていた決まった作業を、システムで自動化する」のが中心でした。
ただ、これまでの DX には、手が届かない領域があったんです。「思考」や「曖昧なもの」が伴う業務です。
評価面談で、部下の様子を見ながら言葉を選ぶ。提案書を、相手の業界事情を踏まえて書き分ける。マニュアル化されていない、先輩の動きを真似て覚える。こうしたものは、システムに置き換えようがなかった。
ここに、生成 AI が登場しました。思考や曖昧さを含む業務まで、AI と一緒に再設計できるようになった。
だから私たちは、こう捉えています。
AX は、DX を「乗り越える」次の概念ではありません。DX の中で、AI を使った業務変革という領域が、新しく大きな比重を占めるようになった。それだけです。
「DX か AX か」ではなく、「DX の中の AX」。これまで DX に取り組んできた会社が、その延長で AI を使った変革を進める。それが自然な流れだと思っています。
DX をきれいに終わらせてから AX、じゃなくていいんです。並行して、できるところから AI を入れていけばいい。
「AI 導入」を、もう少し具体的に分解します
「AI 導入って、結局なにをするの?」という問いに、私たちのチームはこう答えています。
それは、3つの変化を起こすことだと。
1つ目:スピードが上がる
AI が入ると、これまで1日かかっていた仕事が1時間で、1週間かかっていた仕事が1日で終わる。そういうことが、そこら中で起こります。
ただ、スピードが上がっただけだと、ただの効率化です。本当に効くのは、試行回数が増えること。試して、調整して、また試す。このサイクルが速くなると、結果の質が変わります。
2つ目:一人がやれる範囲が、爆発的に広がる
これまで一人では到底回せなかった量・幅の仕事が、一人で回せるようになります。
LP の設計、画像の生成、文章の推敲、データの集計、SNS の投稿、議事録の整理。これら全部を、一人が AI と一緒に走り抜けるのが、当たり前になります。個人の能力が拡張される、と言ってもいいです。
3つ目:違う価値を生み、次の新しい価値を生む
ここが、一番大事だと思っています。
これまで、計画を立てるのも、実行するのも、仕組みを具体化するのも、試作品を作るのも、それを発展させるのも、全部、人がやらなきゃいけませんでした。
ここがかなりの部分、AI に置き換わります。AI が一緒に計画を練り、操作を実行し、仕組みを具体化し、試作品を作り、発展させる。もちろん、全部 AI が自立して判断できるわけではありません。人の判断・チェック・考えを入れながら進めます。
それでも、人が一人で抱え込んでいた量と種類が、大きく変わります。
その置き換わった分、人はどういう新しい価値を生み出せるのか。これこそが、AI 導入の重要な論点だと思っています。
「AI に任せる」と「人がやる」の線引き
「じゃあ、何を AI に任せて、何を人がやるの?」これも、よく聞かれます。
私たちは、こう整理しています。
AI に任せられること(思いきって任せていい):
- 既存業務の自動化
- 計画を一緒に練る
- 実際の操作を実行する
- 仕組みを具体化する
- 試作品やプロトタイプを作る
- 作ったものを発展させる
- 整理・下書き・選択肢を出す
人にしか担えないこと(ここに時間と気力を集中する):
- 新たな価値を創造する
- 方向性を決める
- これまでなかった発想を考える
- 仕組みの思想を考える
- 全体を管理し、チェックし、正しい指示を出す
AI が走ってくれている分、空いた余白を、この5つに集中して使う。すると、生まれた価値が次の価値を呼び込み、価値創造の連鎖が始まります。これが、私たちの考える AI 導入のゴールです。
ひとつ、注意していること
「AI と一緒に進める」と言っても、人が AI の出力を監視・承認する作業は当然発生します。自動化を回す上で、これは必要な業務です。なくす話ではありません。
ただ、ここに人の時間が全部吸われてしまうと、本来のゴール(新しい価値創造)にたどり着けません。
監視・承認は、できるだけ仕組み化して、人の時間が 人にしかできない5領域 に集中できる状態を作る。私たちはこれを「価値創造型 AX」と呼んでいます。
どこから始めるか
「うちでも始めたいけど、何から手をつければ…」というご相談には、こうお答えしています。
- AI で何ができるか、具体例を10個知ってください。抽象的な「AI で効率化」ではなく、具体例で。
- 「これがあれば、違う価値を生めるのに」と感じている業務を1つ選んでください。減らしたい業務ではなく、伸ばしたい業務から始めるのがコツです。
- AI に任せる仕事、人が判断する仕事、新しい価値を生むために空ける時間を、明示的に分けてください。
順序を間違えると、「何のために空けるかを決めないまま AI を入れる」罠にはまります。「何を伸ばすか、何を空けるか」を決めてから、AI を入れる。これだけで、半年後の組織の動き方が変わります。
おわりに
「AI 導入って、結局なに?」への答えは、私たちのチームでは、こうです。
「人が、人にしかできないことに集中するための準備をすること」。
DX を完璧に終わらせてから AX、ではないんです。DX の中で、AI を使う領域を、できるところから増やしていく。そして、空いた余白を、新しい価値創造に使う。
半年で技術が変わり、1年で業界の常識が変わる時代です。5年先、10年先の予測は、誰にもできません。だからこそ、判断できて、新しい価値を生み続ける組織であることが、一番効くリスクヘッジだと考えています。
人は、人にしかできないことに集中し、新しい価値創造をする。
これが、私たちヘッズAIチームが提案する AX の言い方です。
もし、この考え方に共感していただけたら、ぜひお話しさせてください。
来週は、3つ目の原則「会社のコンテキストを充実させていく」を、マニュアルや社内ドキュメントの話として、もう少し具体的に書きます。
ご一読、ありがとうございました。
— アキ